ペーパーバックの数が増えていく TEXT+PHOTO by 片岡義男

45 「即興的散文」とはなにか

b0071709_2283752.jpg ペンギン・ブックスが自分のところからすでに刊行されている数多くの作品のなかから、「エッセンシャル・ペンギン」として四十冊を選んで出しなおしたとき、ジャック・ケルーアックの『オン・ザ・ロード』には、このような装丁があたえられた。一九九十年代の後半のことだったと記憶している。『路上にて』はこうもなり得るのか、と思いながら買った。その当時の感覚で見て、これはいまふうのデザインの一例だったのだろう。よく見ると描かれている自動車は一九五十年代のものだ。この版はいまでも手に入るようだ。
 サル・パラダイスとディーン・モリアティというふたりの青年が、アメリカを放浪者のように旅をしていく様子を描き出したケルーアックの文章は、「スポンテイニアス・プローズ」と呼ばれた。「即興的散文」だ。放浪の旅という体の動き、そしてそれにともなう思考や感情の動きを、動きのままに文章へと移し替えていく。文章だけが興にまかせて垂れ流されるのではなく、文章よりも先にまず体の動きがあり、それにともなって必然的に起こってくる思考や感情の動きが、それに続く。自分が体験していくそのようなさまざまな動きに対して、自分が忠実なままであるかぎり、文章も動きをそのままに写し取る。「即興的」とは、そのような意味だ。ケルーアックが『路上にて』で試みた文章は、体の健康さのようなものが忠実に反映された、きわめて健全なものであり、すこやかですらある、と僕は感じる。
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by yoshio-kataoka | 2006-11-14 22:10





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