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ペーパーバックの数が増えていく TEXT+PHOTO by 片岡義男

23 バンタム・ブックスの白と黒

23 バンタム・ブックスの白と黒_b0071709_22311237.jpg バンタム・ブックスというペーパーバックのシリーズも、初めは小さいサイズだった。それが背丈十八センチへと大きくなったときには、その大きいサイズはバンタム・ジャイアントと呼ばれた。定価も十セントは高くなったと思う。背丈を二センチのばすだけなのだが、それはペーパーバックの出版社にとって、かなりの決断を必要とする、特別なことだったようだ。
 サイズが大きくなり、そのサイズがバンタム・ブックスにとっての標準として定着してから、バンタムの背は黒に統一された。そしてそれから何年か経過したあと、今度は白へと統一された。黒い背と白い背のバンタム・ブックスを色だけで適当に選び、十九冊を積み上げて写真に撮ったら、こんなふうになった。ペーパーバックが持つ簡素な美しさの、ひとつの好例だと僕は思う。
 いちばん下にジャニス・ジョプリンの伝記がある。その次がリヴ・ウルマンだ。セバスチャン・シャブリゾ。ジョン・オズボーン。ヤン・デ・ハルトホ。ロラン・トポール。フランソワ・モリアック。W.サマセット・モーム。カレル・チャペク。キャサリーン・ダン。E.V.カニンガム。トーマス・マッグエイン。ダニエル・キーズ。ポール・ジンデル。ウィリアム・インジの『さようなら、ミス・ワイコフ』。それからルドルフ・ワーリッツアー、そしてマイク・セント・クレア。適当に選んでこうなのだから、これはすごいとしか言いようがない。その気になりさえすれは、ほとんどありとあらゆる領域に向けて、読みほうだいに読むことが可能だったのだ。
 ペーパーバックという形態は、次から次にかたっぱしから大量に読む、という読書のしかたをも可能にしていた、といまの僕はつくづく思う。これは、と思う内容の著作を、かたっぱしから大量に刊行していく、という制度のようなものを、ペーパーバックというかたちが可能にしていたからだ。ここにある白い背と黒い背のバンタム・ブックスは、一九六十年代から一九七十年代へとまたがっている。
by yoshio-kataoka | 2006-07-19 22:32





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