ペーパーバックの数が増えていく TEXT+PHOTO by 片岡義男

21 ブルックリン小説というジャンル

b0071709_105871.jpg  いずれかならず読むのだと何度も思いながら、いまにいたるもまだ読んでいない本、というものが何冊もある。ここにあるこれも、そのうちのひとつだ。大学生の頃にポピュラー・ライブラリーの新刊で買った。そしてそのままいまでも持っている。経年変化という作用を受けて、ほどよく古書の雰囲気を獲得してしまった。
 ブルックリンの貧しい地区に生まれ育ったベティ・スミスという女性による、自伝としても読むことの出来る小説だ。いまでは知る人も少ないかもしれないが、アメリカではたいへんに人気のある小説で、一九六二年の時点で三百万部が売れていたという。初版が世に出たのは一九四三年だった。
 父親は救いようのない酔っぱらい。弟だけが家族から可愛いがられ、美人の姉は男から男へと渡り歩き、母親は主人公のフランシー・ノーランを、まるで目の仇のように干渉し圧迫し強制する。そのフランシーがブルックリンで成長していく物語だ。少年や少女の成長小説はアメリカにたくさんある。ニューヨークのブルックリンを舞台に、そこで生きる人たちの悲喜こもごもを描いた人生小説、というジャンルもアメリカにはある。ベティ・スミスのこの作品は、そのふたつの領域にまたがる、古典的と言っていい傑作だ。映画になったときの日本での題名は、『ブルックリン横町』だった。
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by yoshio-kataoka | 2006-07-10 11:20





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